携帯サイト「超らーめんナビ」達人イラスト(ラーメン評論家似顔絵)/2008年5月
携帯電話=ガラケーだった頃、「超らーめんナビ(通称:らーナビ)」という携帯サイトがありました。まだラーメン情報もガイドブック中心の時代ですから、非常に画期的。利用されていたラーメン好きの方も多いことでしょう。そのサイトで、ラーメン評論家の方々が「達人」としてコラムを連載されていました。ラーメンデータバンクが発行していたミニ雑誌「月刊とらさん」には、その「らーナビ」のコーナーがあり、そこで使う達人のアバターとして、似顔絵を制作したのです(つまり「らーナビ用」ではありません)。
上段左から、大崎裕史さん、武内伸さん、石神秀幸さん、北島秀一さん、一柳雅彦さん、下段左から、山本剛志さん、佐々木晶さん、小林孝充さん、はんつ遠藤さん、河田剛さん。〈注〉本来、石神さんはいなかったのですが、キャラ作りの一環として試作しました。他の方々の個性を、より際立った形で制作するためです。しかしその後、石神さんもらーナビ達人になられたとのこと。また一柳さんはらーナビ達人はされていませんでしたが、誌面上必要があったため制作しました。
どの評論家さんもテレビや雑誌でよく目にしていましたし、それなりに評論家としてのスタンス、傾向もわかっていましたから、写真を見て描くだけとは違って、充分にキャラクターを反映させることができました。
ありがたいことに、何人かの方はその後もSNSのアバターに使ってくださった。「しうさん」の愛称で親しまれた北島秀一さんも、2014年9月に亡くなるまで、ずっと使い続けてくれたのです。亡くなる1年ちょっと前、Facebookにこんな言葉を遺してくださっています。
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FBをやっていると「友達の友達とかで、よくあちこちでコメントとかは見ているけど会うのは初めて」と言う方が大勢いる。当然私もそうやって見られる機会もしばしばあって、お互い「あ、お名前はかねがね」となる。
そんな時、八割以上の確率で言われるのが「イラスト通りですね」【笑】。青木画伯によるこの似顔絵、ホントに認識率が高い。FBではリアル写真を推奨しているようだけど、実際写真って結構すぐに実物とは変わって来てしまうもんなんだよなあ。
イラストは特徴を捉えてデフォルメしてるから、多少太ったり痩せたり年をとったくらいじゃ特徴がずれないんだろうな。いやあほんとに助かっております【笑】。(北島秀一さん/2013年6月30日)
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警察にはモンタージュという技術があり、今ではCGも発達しています。それでも似顔絵はなくなりません。写真というのは存外、イメージを固定・限定してしまいます。少しでも違う点があると対象から除外されてしまう。似顔絵のいい意味での曖昧さが、幅広く印象を捉えるわけです。
また、わたしが子供の頃の特撮作品は、今観れば作りものめいた部分もあったわけですが、視聴者が無意識のうちにアラを補完しながら視ていたそうです。しかし現代の全編3DCGの作品などは、逆に無意識でアラ探しをしてしまうのだとか。人間の心理というのは面白いものですね。
似顔絵で大事なのは、顔貌を似せるというよりも「印象」を似せること。北島さんはよく笑顔を見せる人でもあったのですが、なによりラーメン界きっての知性派・理論派。取材内容を澱みなく伝えようとする人でした。ラーメン評論の中で読者を笑わせたり、煽ったりもせず、大袈裟・過剰な表現も控えていた。その姿勢をこそ表したかったので、自然といかめしい表情になっていたのです。
北島さんの感想は、まさしく「似顔絵」というものを芯で捉えています。北島さんがそのように理解してくださっているとは、感激の至りでした。願わくはもっともっと長く、修正が必要になるくらいまで使い続けていただきたかったです。
亡くなられて数年後、北島さんのお友達にお声掛けいただき、お墓参りに行きました。その方から、北島さんがこの似顔絵の自慢をされていたこと、「青木さんからデザインの話を色々聞いてみたい」と仰っていたことを伺ったのです。わたしこそ、もっと遠慮せずにお話すればよかったと悔やまれてなりませんでした。