Atelierラ部

ラーメン業界での、デザイン、イラストレーションなどに関するブログです。

2019年11月

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「初代けいすけ」食べ方POP/2007年12月


2004年にオープンした、品川のラーメン集合施設「品達」。2007年の12月に2店舗が入れ替わり、「くじら軒」のあった場所に「初代けいすけ」が入ることになりました。そのときに依頼されたのがこのPOPです。

「凪」の食べ方POPでは、お客様の経験値を3段階に分けましたが、今回は1回の食事においての順序なので、意味が異なります。


そこで、わかり易すぎるくらいの内容にしました。なぜなら、それが施設の店舗だからです。当時の「けいすけ」といえば、まさにラーメン界の最先端を突っ走っていました。独特のギミックがあり、その個性を求めてお客様が集まっていたのです(これを目的来店といいます)。しかし施設店となえるとそうはいきません。

駅近・集合施設・イベントなどでは、「そのラーメンを目的に行く」という熱心なお客様の割合はとても減ります。「なんかあるから、どこか入ってみるか…」というお客様(これを衝動来店といいます)が多くなる。


路面店での固定客と違い、幅広くなる客層・ニーズに応えるため、メニュー数も増える。中でもつけ麺を出すことになった。その環境では〝取説〟的なPOPが必要なのです。


竹田さんを〝けいすけ〟というキャラとして活用し、食べ手側を演じてもらいました。店主さんの中には、まったく表に出てこない人もいますが、竹田さんは専門誌にもよく登場し、象徴的な存在として効果的だと考えたからです。敢えてコミカルなキャラクターにすることで、コワモテな印象をやわらげています。


それまでラーメン店に食べ方POPがなかったわけではありません。しかしこのPOPは、「TETSU」の食べ方POPとともに、かなり模倣されたようです。全国各地から、ソックリなPOPの写真が送られてきました。遠征旅行に行ったラーメン仲間が見つけて、写真を送ってくれたのです。中にはオープン1日目の店もありました。かつては何十年でも見過ごされるものでしたが、さすが現代の情報伝達力の早さ、タイムラグのなさに驚くばかりです。


「初代けいすけ」は、ほぼ10年間、品達で営業されていました(現在、同店舗には「金澤濃厚豚骨ラーメン 神仙」が入店しています)。現在は本駒込に本店を構えています。


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「株式会社 グランキュイジーヌ」オフィシャルサイト

「ラーメン・どんぶりの品達」オフィシャルサイト


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「初代けいすけ」「二代目 海老そば けいすけ」
店頭注意書きPOP/2007年10月


「ラーメン界の革命児」と呼ばれ、「けいすけ」ブランドで数々の未知のラーメンを生みだし、いまや世界で大活躍の竹田敬介さん。その竹田さんが三店舗めを「三代目 紅香油 けいすけ」として立川ラーメンスクエアに出店した際、同施設に出店していた「凪」の生田さんと知り合いました。そして「凪」のPOPを見て、わたしにお声掛けがあったのです。その内容は、


「説明文を貼っても、読んでもらえない」というご相談。


現在では移転・休止しているブランドですが、当時の「初代けいすけ(本郷)」や「二代目 海老そば けいすけ(高田馬場)」の店舗は入口付近が狭く、入店して食券を買ったお客様がその場に留まってしまうと、帰るお客様の邪魔になってしまうのです。そのため「いったん外に出てお待ちください」と注意書きを貼ったものの、誰も読まずに改善されない…というお悩みでした。


意外に思われるかもしれませんが、ほとんどの人は文章を読みません。スマホに釘付けの場合は論外ですが、そもそもよほど気をつけている方以外は、はじめから読もうとしないのです。人が文章を読む気になるのはせいぜい2行。文字数で10~15文字程度です(一瞬で目に入る程度)。注意書きをきちんと読む人は、全体の1~2割程度だと思いますし、多くの人は群集心理によって、他人の行動に引っ張られているだけです。


そこでわたしは、改善案として、

 ・イラストを入れること

 ・ストーリー仕立てにすること

を提案しました。人は文章は読まないけれど「絵」は見ます。思考せずに解釈できるからです(凪・立川店POP参照)。



これは、わたしの過去の経験が活かされています。まだイラストレーターとして駆け出しの頃、「週刊SPA!」で初めて雑誌コラムのカットイラストを描いたのですが、「コラムのネタバレにならないように…」と気をつかいました。しかし編集さんからは「オチまで全部イラストにしていいから」と言われてしまったのです。文章を読む人はイラストでネタバレしても読むけれど、世の中には「記事はほとんど読まず、イラストや写真しか見ない層」がかなりいる、と教えられたのでした。


このイラストPOPは無事に効果を発揮し、お店の方にも喜んでいただけました。お陰で「けいすけ」グループでは、その後もご依頼をいただき、イラストを活用されています。


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「新潟復興ラーメン どなぎ」ロゴタイプ他/2007年11月


2007年の7月に、新潟中越沖地震がありました。そのチャリティ企画として、渋谷の「凪」で開かれたイベントです。味噌ラーメンの人気店「ど・みそ」とのコラボで、限定ラーメンを提供しました。


そのときのロゴ、ダイレクトメールなどをデザインしました。実際はロゴまで発注されてはいません。1回限り、1晩だけのイベントに、わざわざデザインする必要はない。「ど・みそ×凪」というタイトルなら、元のロゴ同士を組み合わせればいいですが、わざわざ「どなぎ」とネーミングされています。ならばそれに相応しいロゴデザインがあったほうがいい…と考え、制作しました。せっかく開催するチャリティイベント、せっかく送るダイレクトメールなのです。


オリジナル文字ですが、「つながり」を意識させたかったので、行書のように続け書きの形にしました。あまり悲壮感を煽るのはイヤでしたので、明るい感じで。


ラーメンの絵は「凪・1周年記念Tシャツ」のときに制作したラーメンイラストレーションを使い、「ど・みそ」の分も新たに制作、ふたつを重ね合わせました。〝コラボレーション〟というワードも、まだまだ新鮮な時代でした。


新潟は2004年の地震被害から復興を続けていた時期だったので、大変だったと思います。そのとき凪は、すぐに物資をかき集め、地震の翌日には現地に行き、役場に交渉して炊き出しをしていたんです。おそるべき行動力でした。


その数年後、「凪」とともに新潟での復興イベントに同行し、集まってくれた皆様にラーメン提供のお手伝いに。たくさんの方から「炊き出しに来てくれたときは本当に助かったよ」という声をかけていただきました。


また、この「どなぎ」イベントでは、自分のその後に関わっていく方々と知り合いました。そういう人たちがこのチャリティイベントに集まっていた。グルメ的な「食べた自慢」ではなく、それによって何かしらの役に立とうという、当時の熱量を思い出させます。


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「ラーメン 凪(立川)」食べ方指南書/2007年1月


立川店(アレアレア)をスタートさせるにあたり、メニューについてのPOPを作ることになりました。わたしが制作した初めての食べ方POPです。文字だけで簡素に作れば、20分もあればできますが、これはその数十倍の時間をかけて作っています。


この形を選んだ最大の理由は「載せるべき情報が多かった」ということ。もしも文章だけだったら、上から下までテキストだけで埋め尽くされます。そんなもの、誰も読む気になりません。


絵:イラストで表現するメリットは以下の通り。


1.目を引くことができる。

2.より多くの情報を乗せることができる。

3.飽きずに読んでもらうことができる。


絵:イラストは、文章と違って目を引きます。そして一瞬でたくさんの情報を読み取ってもらうことができます。

たとえば「二段」の「凪玉」などは、文章で説明すると「凪玉とは、肉味噌などに個別の味付けを施した『凪』独自のトッピングで、途中から徐々にスープに溶いてもらうとひと味違う豚骨ラーメンに……」といった長さになってしまう。正確で丁寧ですが、絵で見てもらえれば、その意味するとことは伝わりますし、視覚的に美味しさを伝えることもできる。ラーメンの待ち時間に読んでもらえれば、退屈せず、楽しい雰囲気も感じてもらえる。


そしてそれを「段階的」に見せました。ここも大事なポイントです。すべてを並列にしてしまうと散漫になって、見る人はどこから手をつけたものか悩んでしまう。そこで武道のように「段」を設け、初心者~回数を重ねるごとに楽しんでいただけるようにしたのです。楽しさ重視の「凪」ならば、こうした遊び感覚もマッチすると考えたのでした(落ち着いたお店なら、別のやり方があります)。


この制作の際、わたしが参考にしたのは「なんつッ亭」のPOP。古谷店主をキャラクター化して、注文から食事、会計までをストーリー的に紹介していたのです。現在のものは、プロの手による(であろう)キャラになっていますが、この当時は、手描き感・手作り感のある小さなサイズのもの(店主の奥様の作と記憶しています)。「なんつッ亭」らしい、おかしみのあるPOPでした。

また(これは同じPOPだったか忘れましたが)興味深かったのが「麺から食べてください」という表記。「なんつッ亭」の熊本ラーメンは豚骨スープにマー油が浮いているので、少し混ざってから味わったほうが美味しいわけです。そういった個性もしっかり紹介してあることに注目していました。


それを自分なりに膨らませ、要素を加えて仕上げたのです。店主キャラクター、段階的説明、楽しさ・個性の演出、などの要素について把握することができた、大事な案件でした。


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