「ラーメン 凪」1周年Tシャツ/2007年6月
わたしがまだ、ラーメンのお仕事をする前のこと。仕事の合間にラーメンのイラストレーションの制作をしていました。仕事でも趣味でもなく、ただただ創作欲の赴くままに作ってみたくなったのです。そしてそれが完成したとき、その柄のTシャツが欲しくなりました。友人がアイロンプリントにしようと勧めてくれ、ふたりでその足で用紙を買いに行き、自作して着ていたのです。
さらに、そのTシャツを面白いと言ってくれた別の友人が、業者さんを紹介してくれ、売り物として販売することになりました。ただこれにはひとつ問題があったんです。元々の動機がビジネスではなく、ただの創作欲からだったため、各ラーメンの店主さんに了承をとっていなかったこと。販売した数も微々たるものですし、ラーメンの外見に著作権(肖像権?)はないのですが、それでもラーメン好きのひとりとしてはとても後ろめたかった。またいつか販売できるなら、そのときはきちんと許可をとって販売しよう…と決めていました。
そんな思い出話を生田さんに話してみたところ、「それうちで作ろうや!」と言ってくれ、渋谷店の1周年記念として制作することになったのです。先述したとおり「許可を取っていないこと」が問題でしたので、生田さんはこの企画に賛同してくれそうな店主さんに声をかけてくれました。生田さんが当時仲良くなっていた有名店主や、彼のお弟子さん、あの「博多一風堂」の河原社長にまでご賛同いただきました。
ご協力いただきました店舗:(左上から順に)「博多一風堂」「ラーメン きら星」「季織亭」「五行」「秀」「なんつッ亭」「麺の坊 砦」「らーめん愉悦処 鏡花」「支那そば きび」「せたが屋」「初代けいすけ」「麺処 くるり」「麺劇場 玄瑛」「麺や 優」「らーめん屋 鳳凛」「七重の味の店 めじろ」「虎」「博多 新風」「塩らーめん あいうえお」「ラーメン凪」「樹」「ぷりん屋」「麺歩 バガボンド」「負死鳥カラス(現:不死鳥カラス=浅草開化楼)」「ラ部」「ブレンバスタ」。
裏面には各店のロゴを並べました。表側のラーメンがどこのラーメンなのか、答え合わせできるのです(それ以外のロゴは、関連業者や生田さんとつながりのあるお店のもの等です)。
この「ロゴを並べる」という形、他の業種にはあったと思いますが、当時のラーメン界では、グループとかコラボのような形式がほとんどなかったので、「これがラーメンTシャツのスタンダードになった」と言ってくださる方もいます。それくらい、インパクトがあったということですね。実現させてくれた生田さんに感謝です。
実はこのTシャツ、サントリーの缶コーヒー「BOSS」のポスターに載ったことがあるのです。「BOSS」の企画で、様々な職業の男性(主に職人さん)の写真が街中や駅に貼られました。ラーメン店員としては「凪」の西尾さんがこのTシャツを身に着け、トミー・リー・ジョーンズとともにポスターになったのです。自分の小さなアイデアが様々な人の手を借りて形になり、そして広く世間に見てもらえたというのは感慨深いものがありました。
小さいものしか残っていないのですが、駅で撮影した画像を貼っておきます。ポスターには西尾さんの言葉も記されています。
「厨房の中は、いつも夏。夏だと気温70度。やばいです。」
当時、渋谷店の厨房は本当にそんな状態で、温度計が熱で歪んでしまったほど。熱中症の危険があるので一時期休業していたくらいでした。
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