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「麺や 優」店頭ポスター/2008年4月


かつて吉祥寺にあった「音麺酒家 楽々」をご記憶の方も多いでしょう。「中華そば しば田」や「三鷹食堂 いなり」など人気店を輩出したお店。「麺や 優」は、その「楽々」を経営していた磯部店主が、最初にオープンしたお店です。

磯部さんは元々「凪」に在籍していましたが、師匠同様に「立川ラーメンスクエア」が行うラーメン・トライアウトで優勝し、同施設で「麺や 優」をオープンしました。当時はダブルテイスト、いわゆる「味変」が流行り始めていて、「麺や 優」も、ジュレのついた塩ラーメンが評価されて優勝したのです(2人いた準優勝のうち1人は、「らぁ麺 やまぐち」の山口店主!)。オープン後は「プラステイスト」という名で、鯛と鰹のジュレをトッピングとして出していましたね。

しかし実際の営業では、なかなか苦戦されたようです。これは施設というものの特徴なのですが、路面店よりも「目的客」が圧倒的に少ないため。特に店を決めず、フラッと立ち寄ったお客様は、変わった個性、先進的な要素があると「よくわからない」という理由だけで敬遠されてしまう(住宅街などもそれに該当します)。

そのため、「醬油・塩・味噌」と備えている店や、「豚骨」を全面に打ち出した店が流行りやすい。〝味が想像しやすい・わかりやすい・使い勝手がいい〟からです。当時のラーメンスクエアでも、常に売上が高かったのはその特徴を備えた2店舗だったそう。


そこで相談されたのが「他店との差別化を図る」ということと、「来店のハードルを低くしたい」という2つの要素でした。相談の結果、決まったのが「どこか懐かしい(万人のイメージする)中華そば」。そのポスターを制作することになりました。

ただ、ラーメンにナルトやほうれん草が入るわけでもないし、丼も雷文や龍、双喜紋入りでもない。そこで、昭和っぽい町並みのイラストレーションを背景に。木造家屋、板塀、木の電柱、郵便ポスト、煙突など。黄色をかぶせてレトロ感を出しましたが、暗いトーンは避け、ややポップな仕上がりに。


磯部店主は体調を悪くされた関係で「楽々」を閉じられましたが、現在はラーメンプロデューサーとして、全国各地のお店の立ち上げやレシピ作り、店舗の立て直しなどで活躍中。

2020年1月現在、大阪で「麺 かねき商店」という店を立ち上げ、店主として腕を揮っています。提供するのは札幌スタイルの味噌ラーメン、生揚げ醬油を使った中華そば、濃厚に炊き出した豚骨ラーメンと、日本を代表する3つのラーメン。万人が喜ぶ受け皿を作って勝負されています。磯部さんのこれまでの歴史を知っているわたしにはとても感慨深いです。

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ラーメンプロデューサー「イソベ」のブログ
「麺 かねき商店」(食べログ)